2008年9月14日日曜日

10年前の忘れられない恋

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上のリンクはこれから勝手に朝日新聞のコラムを引用するので、お詫びの誘導です。

「大リーグが大好き!」向井万起男(慶大医学部准教授)

フィラデルフィア・フィリーズのリリーフ右腕投手、トム・ゴードン。40歳のベテランだ。今年7月6日、右肘の炎症のために故障者リスト入りして戦線から離脱した。今シーズン内の復帰は無理なようだ。
大リーグには40歳を超えても現役バリバリの投手がいる。そうした投手の中には、故障しても見事に復帰して大活躍する強者までいる。でも、トム・ゴードンについてはあまり楽観的にはなれない。今シーズンは故障者リスト入りまで5勝4敗2セーブ、防御率5.16という冴えない成績だったし、昨年も長い間にわたって故障者リスト入りして3勝2敗6セーブ、防御率4.73というパッとしない成績で終わっているのだ。投手生命の終わりが近いのかもしれない。もしそうなら、淋しい。この10年間、私はずっとトム・ゴードンのことを気にかけてきたからだ。その間、トム・ゴードンは幾つもの球団を渡り歩いたが、どの球団にいても、私はいつも気にかけていたのだ。
10年前の1998年、トム・ゴードンはボストン・レッドソックスの抑えの切り札として光り輝いていた。46セーブという素晴らしい成績を残し、ア・リーグの最多セーブのタイトルまで獲得した。でもそれだけなら、私だって妙にこだわったりはしない。最多セーブの投手は毎年誕生するわけだし。ところが、この年のトム・ゴードンの活躍をとりあげ、タイトルにその名前まで入れた傑作小説が翌1999年に出版されたのだ。スティーヴン・キング著『The Girl Who Loved Tom Gordon』(邦訳本のタイトルは見事な直訳『トム・ゴードンに恋した少女』。新潮文庫、訳・池田真紀子)。
主人公は金髪の白人少女、トリシア。まだ9歳だ。レッドソックスの大ファンで、一番のお気に入りはトム・ゴードン。美男子のトム・ゴードンに手を握られたら気絶しちゃうとさえ思っている。そんなトリシアが森の中で迷子になり、生き残りをかけた戦いを始める。その戦いの間、孤独なトリシアが心の支えとするのはトム・ゴードンだ。大好きなトム・ゴードンの活躍ぶりを思い浮かべては勇気を奮い起こし……。
この10年でトム・ゴードンも老けた。でも1998年、1人の少女がトム・ゴードンに恋して、心の支えにまでしたのだ。大リーガーにとってこれ以上に素晴らしいことなんて滅多にあるもんじゃないだろう。
私は10年前のトム・ゴードンを決して忘れない。“どんな恋にも必ず終わりがくる”なんて言わせない。


『トム・ゴードンに恋した少女』を読んでいないほとんどの新聞読者には、力説されても意味不明で困るところでしょうが、私は良く分かりますよ。

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