2009年12月30日水曜日

「スリーピング・ドール」にキャッスルロックが

ジェフリー・ディーヴァーの長編小説『スリーピング・ドール』に「キャッスルロック」の地名が登場しています。

ジェフリー・ディーヴァーといえば、デンゼル・ワシントンとアンジェリーナ・ジョリー主演で映画化された『ボーン・コレクター』を第1作とする"リンカーン・ライム/アメリア・サックス"シリーズが代表的。そのシリーズ第7作『ウォッチメイカー』は、2007年末の「このミステリーがすごい」「週刊文春ミステリーベスト10」の双方で1位になりました。

この『ウォッチメイカー』でリンカーン・ライムの捜査に協力した捜査官キャサリン・ダンス - 尋問の天才 - が『スリーピング・ドール』の主人公です。

『スリーピング・ドール』の舞台はカリフォルニア州モンテレー。ストーリーは、キャサリン・ダンスが、資産家一家を殺害したカルト集団のリーダー、ダニエル・ペルを尋問しているところからはじまる。ダニエル・ペルは普段、きわめて凶悪な犯罪者を対象とする"スーパープリズン"キャピトーラ刑務所に収監されているが、未解決事件の犯人である可能性が明らかになり、ダンスの尋問を受けるためにサリナスにある郡裁判所の取調室に移送されてきた。しかし、ダンスの尋問後にペルが脱走してしまう。ダンスはペル捜索の指揮を取ることになった。

「キャッスルロック」の地名が登場するのは、この直後、ダンスがペルの逃走経路を予想している47ページ下段で、次のとおり。
"パスチャーズ・オブ・へヴン"(天の牧場)とは、ハイウェイ六八号線近くにある果樹園がどこまでも続く緑豊かな谷の俗称で、名付け親は、同名の短編集を発表したジョン・スタインベックだとされる。サリナスは起伏の少ない農地に囲まれているとはいえ、その輪のすぐ外には深い森が広がっている。さらに、起伏の激しいキャッスルロックもほど近い。その一帯の崖や急斜面や林は、絶好の隠れ場所だ。

『スリーピング・ドール』中で「キャッスルロック」がでてくるのはここだけ。この地名が使われた理由は「著者あとがき」中の次の記述を読んで判明した。
同様に、サンタクルス近くの町キャピトーラの真ん中に架空のスーパープリズンを出現させたが、住民の方はきっと笑って許してくださることと信じている。

凶悪な犯罪者だけを収監する脱走不可能なキャピトーラ刑務所は、小説の中だけに存在する架空の刑務所だったわけです。ディーヴァーは「あとがき」で地元の人に謝ったものの、それだけでは足りないと考えたのか、遊びだったのかは知りませんが、架空の町キャッスルロックを配置することで、現実とは違うということを(読書家の一部に)強調しようとしたのでしょう。

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と、ここで終われたらいいのですが、念のためグーグルマップで調べてみたところ、『スリーピング・ドール』の記述とおりの場所に「キャッスルロック」という地名を見つけてしまいました(下のマップの道路名を参照)。該当箇所を読んだ直後に調べたときは見つからなかったのに。

がっかりしましたが、しかし、下のマップの道路をよく見ると、「キャッスルロック」に「Roland Canyon」が交わっているのがちょっと面白い。Roland はもちろん「ダーク・タワー」のローランド・デスチェインを思い出すわけです。キャッスルロックという地名はいくつも存在するでしょうが、ここまでキングファン向きのキャッスルロックは他にないでしょう。このキャッスルロックは周りに何もないようですが、人気の観光地モンテレーから20kmぐらいしか離れていないので、機会があれば交点で記念撮影でもしてみます。


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『スリーピング・ドール』は、"リンカーン・ライム"シリーズでないからと読むのをためらう必要はない、ドンデン返しの名手ジェフリー・ディーヴァーらしい作品で、ディーヴァーの読者にお勧めの作品です。

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